残業しないで帰りなさい!

「お食事にご招待したいって久保田さんにお願いしてあったんだけど、ダメなんだって?どうしてもダメなのかな?」

まばたきをして、ハッと身を引いた。

えっ!?
重役ってこの人?あのオジサンじゃないの?

困った……、困った。
全く心の準備をしていなかった。

「俺が可愛い子がいるなんて言って騒いだからうちの専務が変なこと言って、嫌われちゃったかな?でも、この間チラッと見かけてね、モデルみたいにスタイルいい女の子だなって思ってたんだ」

その言葉を聞いてビシッと固まった。

瑞穂、どうしよう。
課長以外の男の人にも女の子に見えちゃってるよ……。

イヤだ。
私、スタイルなんて全然よくない。ただ単に背がでかいだけなのに。やめてほしい。

どうしたらいいのかわからなくて、うつむいたら、茶色くて先の尖った靴が目に入った。

この人はオシャレさんなのかな?スーツも変わった柄だし、こういう靴を履く人ってあんまりいない気がするなあ。

靴なんかに注目したりして、全然関係ないことを考えて私は現実逃避していた。

それなのに、茶色いくせ毛の人がもっと近付いてきたから、見ていた靴が胸元のお盆に隠れて見えなくなった。
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