残業しないで帰りなさい!

首を振る私を見て、課長はあれ?っと首を傾げた。

「……じゃあ、来てくれる?」

あ、イヤじゃないなんて首を振ったらそういうことになるのか……。

どうしよう。また一緒にお食事?

行って、みようかな……。
もう課長を見ても涙は出ないみたいだし。

それに本当は……、本当は一緒にいたいと思っている私がいる。

ここは自分の願望に素直に従ってみる?

私はまばたきをしながら、ぎこちなくゆっくりうなずいた。

すると課長が、そんなに?と思うくらいパアッと嬉しそうな顔をしたから、思わず目を奪われた。

やめてほしい。その顔もやめてほしい。その笑顔、王子様が笑ったみたいにキラキラで、目が離せなくなる。

「良かった!じゃあ、行こ!」

身を翻して社員証を出入口のカードリーダーにかざす課長。

え?
課長、このまんま帰っていいんですか?

「あの、課長……?お仕事中だったのでは?」

「うん、もういいよ別に。へーきへーき」

この人、課長なんて立場のくせにかなりいい加減だなあ。この間は管理職会サボってたし。

それともこれはいい加減なのではなく、大人の余裕なのですか?

「行きたいお店なんてある?」

ご機嫌な様子の課長。

そんな、とんでもありません。食事に行くだけでも精一杯なのに。
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