残業しないで帰りなさい!

私を見て、はにかんだように微笑む。

「じゃあ、仲直り、できる?」

仲直り?急に子どもみたいな言い方。私たちはケンカをしていたのでしょうか?

ちょっと困って首を傾げた。

「……はあ」

「ダメ?」

これから一緒にご飯を食べに行こうとしてるのに、仲直りも何もないと思うけど。

「いえ、そんなことは……」

「じゃあ、握手」

「?」

握手?仲直りの握手?

課長は立ち止まると、スッと手を差し出した。

……大きな手。ドキドキする。

私の手よりずっと大きい。私の手だってすごく大きいのに。背が小さくて可愛らしい無遠慮な女子たちから何度『グローブみたい』と言われただろう……。

そんな私の手より大きな課長の手をじっと見る。どうしよう。男の人と握手なんて、したことない。

でも、触ってみたい、と思った。

昨日ずっと私の手を握っていてくれた、あの質感かな?握手しても同じ感じなのかな?
もう一度、触ってみたいなあ。

私の中で、躊躇する気持ちより好奇心が勝ったらしい。

恐る恐るそーっと手を差し出して、そーっと課長の手に自分の手を近づけた。

そっとそっと慎重にゆっくり触れようとする私の様子を、課長はじっと見ているようだった。

課長の手のひらに私の指先がわずかに触れた。触れた瞬間、ほんの少し課長の手が揺れた。

柔らかい?固い?あったかい?
もっと触らないとわからない。
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