残業しないで帰りなさい!

「次は二つ目のごめんね」

「?」

二つ目?まだあるんですね。まあ、いろいろって言ってたもんね?

「君が男嫌いだってわかってたのに、さっきはつい手を握っちゃって、ごめんね」

つい握っちゃった?握手だったのでは?それをごめんね、なんて変なの。

「あれは握手、ですよね?」

課長は目を大きく開いた。

「うん……そう。痛くなかった?」

「こっちの手は怪我してませんから」

「そっか……、そうだよね」

課長は中途半端に笑うと、頬杖をついてうつむき、考え込むように黙ってしまった。その姿につい目を奪われる。

うわぁ……。王子様が考え込んでる。
なんかすごくカッコイイ。急に思慮深い大人の雰囲気。

課長は頬杖をついて、じっとうつむいたまま。どうしたのかな?何を考えてるのかな?

思慮深く見えて実は、オムライスまだかなあ、なんて?そんなわけないか。

沈黙を打ち破るべく、私から話しかけるなんてとてもできなくて、黙って窓の外を見た。まだこの時間だと人通りも多い。

寒くなってきたから、コートを着ている人が増えてきたなあ。ブーツの人もチラホラいるし。

秋物と冬物がごちゃごちゃに混ざっている自分の家のクローゼットを思い出して、そろそろ整理しないといけないなあ、なんてぼんやり考えていた。

「差し支えなければ」

急に話しかけられたから、現実に引き戻されて課長の方を見た。

「どうして男嫌いなのか、教えてもらえる?」

「……」

ちょっとすぐには答えられなかった。
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