残業しないで帰りなさい!

どう言えばいいんだろう。なんて伝えたらいいのかな。どう説明すれば……。

口元に手を当てて悩んでいたら、課長が困ったように微笑んだ。

「いや、無理に話さなくてもいいんだよ。差し支えなければ、だからさ。困らせちゃってごめん」

いや、別に話したくないわけじゃない。

あれ?
……むしろ知ってもらいたいのかもしれない。

何だろう、この気持ち。

知ってもらいたい?

そんな風に思ったこと、今までなかった。

私、課長に自分のことを知ってほしいと思ってる。

課長のことを知りたいし、私のことも知ってほしい。話したい!

でも、何から話したらいいんだろう……。

「えっと……、あの……」

話したいなんて思ったけれど、いざ話そうとしたら猛烈にドキドキしてきた。

激しい動悸を抑えようと胸に手を当て、何度も息を吸ったり吐いたりする私を、課長は心配そうに見つめた。

「そんなに無理しないで」

「い、いえ。話したいんです」

私の発言を聞いて、課長の目が大きくなった。

あ……、焦って変なこと言っちゃった。話したいなんて、おかしいと思ったかな。

「……そう?でも、本当に無理しなくていいからね」

課長はいつもの落ち着いた優しい微笑みを私に向けた。

私の変な発言は流してくれたのかな?
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