残業しないで帰りなさい!
資料を入れた封筒の折り目を付ける作業の手を止めずに聞いた。
「本当なんですかね、そんな怖いもの作ってるなんて噂」
そんなクビを切るような切れ味の鋭い感じには見えなかったんだけどな。うたたね王子っていうより、のんびり王子って感じだったし。
白石さんは肩をすくめた。
「もし作ってたとしても、私たちみたいに薄給な若輩者は対象にならないんじゃないかな」
「そうなんですか?」
「うん。そういうのってさ、お給料たくさんもらってる年長者が対象なんだよ」
「へー……、そういうものですか」
私が首をかしげると、急に白石さんが目を輝かせて身を乗り出してきた。
「ねねっ!それはそうとさ、藤崎課長って話してみてどんな感じだった?」
あれ?白石さん、興味あるのかな?前に藤崎課長は年上過ぎるって言っていたような気がするけど。
「どんな感じって、そうですねえ……、眠そうでやる気なさそうだなーっていうのと、王子様っぽいなーっていうのと。あとは『早く帰んなさい』ってちょっと子ども扱いされてる感じがしましたね」
「あー、やっぱりそうかあ。カッコイイんだけどちょっと残念だなー。年上ってどうしてもそんな感じなんだよねえ」
白石さんは封入の手を完全に止めて腕組みをしてしまった。
こらこら!早く作業やりましょうよ!