残業しないで帰りなさい!

「君は優しすぎるよ。そんなお人好しで……すごく心配」

「そんな!私、全然優しくなんかないですし、お人好しでもありません!」

「いや!優しいし、お人好しだよ」

「本当にお人好しなんかじゃないのに……」

「なに言ってんの?昨日だって久保田さんに騙されたじゃない!なんで久保田さんに呼ばれたのか、わかんなかったんでしょ?」

「それは……」

確かに、昨日はなんで呼ばれたのかわからずに行ってしまったけれど、それはお人好しだからなのでしょうか?

そんなことより……。課長の口から久保田係長の名前が出てきたことの方が、私は気になってしまった。
今は久保田さんなんて言ってるけど、昔は何て呼んでいたの?名前で呼んでたの?なんて思ったりして……。
私、バカみたい。

「そんな風に騙されるから。だから、心配なんだよ」

苦しそうに言う課長を見て、私も苦しくなった。
課長は何がそんなに苦しいの?久保田係長のこと、思い出したから?

「お待たせいたしました」

店員さんが食事を運んできて、あっという間にテーブルは賑やかになったけれど、私たちはなんとなく変な雰囲気のまま。

食事に手を付ける気になれず、じっと湯気の出るハンバーグを見つめていると、課長は気持ちを切り替えるように息を吸って、にっこり笑った。

「食べよっか」

私がうなずくと課長が微笑んだから、私も微笑んで見せた。
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