残業しないで帰りなさい!

……もしかして。
課長の前では、……女の子だから、かな?

「そう言われんのは、やっぱり怖い?」

心配そうに聞く課長。
さっきから課長、怖がられることばかり気にしてる。

あ……、そういえば。

この間、課長に可愛いなんて言われたのをかたくなに否定して、「怖いからやめてください」なんて言ったんだっけ。
だから課長は気にしてるんだ。

私ったら、あの時怖がってあんなことを言ったくせに、今は完全に忘れてた。

なんかなんか、ごめんなさい。

今、私が言える精一杯はこのくらいです……。

「課長のこと、怖くなんて、ありません」

「そう……」

課長はまたうつむいた。まるで何も見ていないような瞳。

「君が入社してきた時……」

おや?話が変わった?

「本社で入社式やったでしょ?俺もそこにいたんだけどさ」

「そうだったんですか?」

「うん。君は隣の席の子に『緊張するね』って話しかけられて、『そうだねえ、緊張しちゃうなあ』って言ったの」

「はあ……」

そんなこと言ったかもしれないけど、全然覚えてない。

「これっぽっちも緊張感なく『緊張しちゃうなあ』って言ったから……」

「?」

入社式に不謹慎でしたか?

「似てるって思ったんだ」

「え?」

「俺と似てるなあって思った」

「はあ」

「なんていうか、空気感っていうのかな。のんびりしてんなあって。だから、ずっと気になってたんだ」

そんな理由でずっと気になってたの?
でも……、似てるかもしれない。

私が課長に惹かれた理由と、似てるかもしれない。

私も課長の雰囲気に惹かれたから。
王子様のくせに、のんびりした雰囲気にすごく惹かれたから。
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