残業しないで帰りなさい!
課長は手すりに腕をかけて体を預けた。なんかそうやって寄りかかる姿、また一段と王子様な雰囲気……。
課長が目の前にいると苦しいです。
そんな寂しそうな顔で優しい瞳をされると困惑する。
課長が好きなのに、課長のそばにいたいのに、私が臆病だからいけないのです。
でも、そんな瞳をされると二番目で苦しくても構わない、などと身の程知らずなことを思ってこの場を立ち去ることもできない。
課長は手すりに寄りかかったままうつむいた。
「もしよければ、理由を教えてくんない?……差し支えない範囲でいいから」
理由?
それって……言ってもいいのかな。
でも、まあ、いっか。
だって見ちゃったんだもん。
本当のことだもん……。
「それは……、えっと、課長が久保田係長とよりを戻されたのかな、と思ったので」
「はあっ?」
課長がいきなり大きな声を出して、寄りかかっていた手すりから身を起こしたからびっくりした。
「なにそれ?」
なにそれ?
だって、だって。
「ご、ごめんなさい!私、さっき見ちゃったんです!本当にすみません。……覗き見みたいなことして」
「さっき?」
「さっき、課長と久保田係長が真剣にお話しされていたから……」
「話してたから?だから、よりを戻したって?」
だって……、だって!
「だって課長、か、壁ドンして久保田係長を逃がさないようにしてたから……、だから……」
「……壁ドン?」
課長は目を細めて、まばたきをした。
なんで、俺にはわけがわかりません、みたいな顔をするの?
思いっきり壁ドンした張本人のくせに。
「だから、課長はまだ、久保田係長のことが、好きなのかなって思って……」
「……それで、俺が久保田さんとよりを戻したって思ったわけ?」
私は顔を上げることができず、うつむいてうなずいた。