残業しないで帰りなさい!

でも、6階あたりでさすがに息が切れてきた。

ハアッ、ハアッ……。

もう、走れない、……です。

私の息が限界になった頃、やっと課長が止まってくれた。
ここは、……7階かな?

激しく息が切れて、二人とも膝に手をついて、肩でハアハアと息をした。
冷たい空気が肺に入ってくる。

こんなに走ったの、久しぶり。

やっと息が落ち着いてきて、体を起こして背筋を伸ばしたら、息を整えている課長と目が合った。

「さすがにもう階段ダッシュはキツいなあ」

課長は大きく息をしてから微笑んだ。そして、ゆっくりと近付いて来てそっと私の肩を押すと、壁にやんわり押し付けた。

動きがあまりに自然で、呆然とされるがままになってしまったけど……。課長、さっきこんな風に触りました?

柔らかく私の肩を包む長い指に力が入って、課長の両腕に体を挟み込まれる。その密着した感触に鼓動が一気に跳ね上がった。

ちょ、ちょっと待ってください!……何してるんですか?

言葉を口に出せないまま、おろおろして見上げると、課長は耳元に唇を寄せた。

「さっきの続き」

課長、そんなこと囁いてますけど、あの……これ、本当にさっきの続きですか?

……それにしては、密着度が急激に上がっていませんか?

課長の瞳も糖度が百倍くらい増してますけど……。私、もう、意識を失いそうです。
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