残業しないで帰りなさい!

静かな階段を見降ろしていた課長が、体を起こして振り向いた、その時。

「課長っ!」

「!」

すぐ下から大塚係長の声!

「業務時間内に女の子口説いてるアンタがリストの筆頭ですよ?」

「あはは。そうねえ、そうだなあ」

手すりに両腕をかけて、上を見上げて楽しそうに笑う課長。そんな、大丈夫なんですか?

バタンッと扉の閉まる音が響いた。
大塚係長も中に戻ったのかな?

……大塚係長、みんなに向かって大声であんなことを言うなんて。そんなノリの人だとは思わなかったなあ。
ちょっとびっくり。いや、かなりびっくり。

そして、本当に見に来る人事課の人々……。
なんかなんか、圧倒されます。

それにしてもリストの筆頭だなんて、課長、大丈夫なの?

私が心配して見つめていると、課長はいつもの優しい瞳で微笑んだ。

その瞳に吸い込まれる。

……本当はずっと前から気付いてた。
あなたの瞳は甘すぎます。
ずっと前からその瞳に、私の心はとろけてた。

だから、そんな優しい瞳で見つめられるとドキドキして、熱に浮かされたみたいに頬が熱くなってしまうのです。
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