残業しないで帰りなさい!

課長は私の渦巻く不安など全く意に介する様子もなく、優しい瞳で見つめると、私の頬にそっと手のひらをあてた。

思わず息を止めて目を大きく開く。

課長……、もう少し甘さを加減してください。
ドキドキが連続しすぎて、私、もう沸騰しそうです。

「さて、誤解を一つ一つ解いていこうかな」

誤解?誤解を解くのに、こんなに糖度を上げて話す必要があるのでしょうか?
だいたい、どの部分が誤解なのでしょうか?

「えっと……、誤解って」

「君、勝手にいろいろ思い込んでるみたいだからさ。きちんと誤解を解いておきたいんだ」

「はあ……」

そういえば、課長が久保田係長に壁ドンしたところから始まったんだっけ。

ふと、頬に添えた課長の手が、そっと私の顔を上に傾けた。不意をつかれて、されるがままに上を見たら、真剣な表情の課長と目が合った。

「大事な話なんだから、ちゃんと目を見て」

エエッ!
そんな……。真剣な瞳は若干糖度控えめだけど、それでも目を見て話すなんて……照れます。
すごく照れます。そんなの絶対無理。

私が視線をそらすと、課長が腰に添えた手を離して、いきなり両手で私の頬をぐにっと挟んだ。大きな手に思いっきり挟まれて、きっとすごい変な顔になってるはず……。

「お願い、ちゃんと見て」

「は、はい……」

変な勢いに負けて、うなずいてしまった……。

はい、とうなずいてしまった以上、ちゃんと目を見て話さないとダメだよね?

恐る恐る課長を見上げると、やっぱり課長は真剣な瞳をしていた。
まあ、……これなら甘すぎないから、まだマシかな。
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