残業しないで帰りなさい!
「うん、見てくれたね」
あっ!またそうやって微笑む!
あっ!またそうやって腰に手を戻す!しかも、両手!
せっかく甘さ控えめになってたのに、糖度が上がるからやめてください!
でも、その甘さに耐えてがんばって見つめる。だって、見ないとまた顔を挟むんでしょ?
「じゃあまずは、久保田さんの件からね」
私はうなずいた。
やっぱりその件だよね。どうして壁ドンまでして迫ったのか。
……でも、聞くのはちょっと怖いな。
二人同時に付き合えないかと思ってさ、なんて当たり前のようにサラッと言われたらどうしよう……。
「俺は久保田さんのことを好きじゃないし、付き合いたいとも思わない。もちろん、復縁したいなんて全く思わない。あの時彼女と話してたのは、君のことなんだよ」
「えっ?」
驚いて目を丸くした。私のこと?何?
「久保田さんが君を契約のだしに使ったのが、どうしても許せなくてさ」
あ……。あの時のこと?
そういえば、あの時久保田係長に食事に行ったら商談がうまくいくって、接待するように言われたんだっけ。
「契約を取りたい気持ちはわかるけど、君は久保田さんの契約とは関係ないからね。久保田さんの言い分は、契約を取るのは会社のためなんだから、君にも関係あるってことだったけど、そもそも契約のために女の子をだしに使う時点で間違ってるんだよ」
「はあ……」
「だから、もう絶対にあんなことはしないでって言ったんだ。でも、久保田さんに話を聞く気がなかったから、俺にしては珍しくあんなことしちゃった」
あんなことって、私が見た壁ドンのこと?
私が首を傾げると課長は失笑した。
「君が見た壁ドンってヤツ」
やっぱり……。