残業しないで帰りなさい!
課長に告白されたからそう思ったわけじゃなくて、課長が王子様だからそう思ったわけで、それは課長がカッコよすぎるからそう思ったわけです。
そして、カッコよすぎる人はみんなそんな感じなのかなあ、なんて思ったわけで、それは私が思い込みの激しい恋愛初心者だからいけないのです。
でも、そんな理由、とてもじゃないけど言えるわけがなくて……。
「……そういうわけではないんです。本当にごめんなさい」
「ふーん。まあ、俺が不誠実じゃないってわかってもらえればそれでいいんだけどさ。それに、言葉だけじゃ信用できないとしても、俺は行動できちんと示すから。俺は絶対に君を裏切ったりしない」
今、サラッとすごいことを言った気がする。
「でも、ヤキモチは妬くと思うなあ。既に妬いたし」
「?」
課長もヤキモチを妬いたの?
「君があの男に触られたなんてね、許せなかったんだ。ああいうのを怒りに我を忘れるって言うのかなあ。だから、久保田さんともあんなに言い合いしちゃったのかもね。君は全然わかってないけど、俺はね、君に狂ってるんだよ」
「!」
サラッとものすごいこと言った!
……君に、狂ってるんだよ?
なぜか体がゾクッとした。
それは、私のことを好きっていう意味なの?
「おかしいよね?自分でも、こんな年になって若い女の子をどうしようもなく好きになるなんて思いもしなかった。若い女の子に狂うなんて、どうかしてると思った。若い君が俺のことなんか見てくれるわけがないと思った。でも、君を前にすると思うんだ。年齢とかそういうことじゃない。俺は、『君』のことが好きなんだって」
始めは失笑しつつ、だんだん真剣なまなざしで話す課長の、その誠実な言葉が胸に刺さって、気が付いたら課長を見上げたまま、ぽろっと涙がこぼれていた。