残業しないで帰りなさい!
課長は困ったようなせつない瞳をした。
「君は泣き虫なのかなあ。それとも俺がいけないのかな?」
私は首を振った。
「課長は、悪くありません……」
私がいけないんです。そんな風に私を思っていてくれたのに、私は課長のこと、全然わかってなかった。
勝手なことを想像して、勝手なことを思い込んで。
課長は何度も好きって言ってくれたのに、私、全然信じようとしなかった。
それなのに、そんな私なのに、課長は飽きもせずにまた「君のことが好きなんだ」って言ってくれた。
課長の言葉はあまりにもまっすぐで、私の心に深く深く刺さった。好きだという気持ちが本当なんだって、心に沁み込んだ。
こんな気持ち、初めて……。
好きだと言われて、それが心に刺さる感覚。
課長は私の頬に手をあてて指で涙を拭った。
昨日もこうして涙を拭いてもらった。
私は課長の前では泣いてばかりいる。
私、泣き虫なんかじゃないはずなのに。
泣きたくなんかないのに。
どうしてこうも涙が出てきてしまうんだろう。
「君の変な思い込みはそんなところ?誤解、解けた?」
なんとなくうなずいたけど、今となっては自分が何をどう思い込んでいたのかすら、よくわからない。
「俺は今誰とも付き合っていないし、君のことが好きで、君の恋人になりたいと思っていて、真剣に交際を申し込んだ。もし君が俺の申し出を受けてくれるなら、ヤキモチは妬くけど、君を裏切ることは絶対にしない」
低く頭上で響く課長の声。
私が知りたいことを全部言ってくれた……。私の気持ちもわかって話してるんだ。
その言葉は誠実で、課長が誠実な人なんだって伝わってくる。
いや、課長はいつだって誠実だった。私が勝手に信じなかっただけ。