残業しないで帰りなさい!
……でも。
課長は何度も私に好きって言ってくれた。
さっきも、すごくまっすぐに好きって言ってくれた。
私も……、私も伝えたい。
身の程知らずかもしれないけど、でも、伝えなきゃいけないんじゃないのかな。
誠実に気持ちを伝えてくれた課長に応えるためにも。
がんばれ、私!
目をギュウッと閉じて息を止めて、それから肺いっぱいに息を吸った。
でも、やっと出たのは小さすぎて蚊の鳴くような声。
「……課長は、『特別』、だから……です」
途切れ途切れで息も絶え絶えになってしまったけれど、なんとか言えた……。
私、がんばった!
これを言うだけで、私は人生の半分くらいの勇気を使ったと思う。
「特別……ねえ」
うんうん、とうなずいた。
「じゃあさっ、その特別って、どういう意味なの?」
「!!」
そんな!
私は今、人生で与えられた勇気の半分を使ってしまったのです。
もうこれ以上は無理……。
そもそも、『特別』という言葉は課長が最初に使い始めたのです。
それなのに、そんなことを聞くなんて。
涙目で課長を見上げて首を振った。
「……言えないの?それとも俺はただの特別なのかな?」
寂しそうな顔をしてそんなことを言う課長。
その寂しそうな顔、わざとじゃないんですか?
だいたい『特別』に『ただの特別』なんてないと思うけど……。
要は「好き」と言ってほしいのですね?
うーん……、でもそんな勇気……出ないよ。