残業しないで帰りなさい!

「俺は君のことが好きだよ」

ん?また言った?
ちょっと首を傾げる。

……俺は言ったんだから、次は君ねって目をしていますね?

「いち、に」

「?」

「さん、ハイッ!」

ええっ!
そんなそんな……、はりきってどうぞ!みたいにされるとますます言えないよう。

「さんハイッ!」

「……」

今は意地悪な顔してないのに、どうしてそんな意地悪言うの?

何も言えずに困り果てて、涙目でただひたすら課長の瞳を見つめるだけ。

すると「言って」と言わんばかりに、ぎゅうっと強く抱き寄せられた。

「わあっ!」

驚いて肩がビクッとする。
今、思いっきり腰が密着した!
ダメです、ドキドキする。
やめてください……。

「怖い?」

首を振る。
怖くはないけど、ドキドキするのです。

「それは俺が特別だから?」

私は小さくコクリとうなずく。
その通りです。さっき私、そう言いました。

「それはつまり……、俺が好きってこと?」

目を見開いて、じっと課長の瞳を見つめた。

もしかして、課長はハードルを下げてくれたのですか?
言えなくても、うなずくだけならできるでしょってこと?

勇気がいるけど。
すごく勇気がいるけど、せっかく課長がハードルを下げて聞いてくれたんだから、答えなきゃ……。

私は涙目のまま、ゆっくりゆっくりうなずいた。
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