残業しないで帰りなさい!
「……金子さん、私が渡した見本は?」
「そんなのもらってませんけど!」
えっ?
何、言ってるの?
そんな、平気で嘘ついちゃうの……?
でも、強く出られると怖気づいて何も言えなくなってしまう。
黙って立ち尽くす私の横から白石さんが間髪入れずに口を挟んだ。
「私見てたよ!青山さん、ちゃんと見本作ってあげてたじゃん!見本どっかにやっちゃったんじゃないの?」
「……」
黙り込む金子さん。
そっか、そういうことか。きっと見本をうっかり袋に入れてしまって、わからなくなっちゃったんだ。
「じゃあ、もう一度見本を作るから、それを見て作ってください。順番を間違えている分は袋から出してやり直しましょう」
「えー、もうそのままでいいじゃないですか!ダメなんですかあ?」
そりゃあ、ダメだよ!だってこれ、めちゃめちゃだもん。どうしてそんなことを平気で言えるんだろう。
心の中でそう思っても口に出して言えない私。
「間違えちゃった分は、私が出してやり直しますから」
「甘いよ、青山さん!そんなのダメ!ちゃんとこの人にやらせなよ」
強い口調の白石さん。うーん、困った。
白石さんの言ってることもわかるけど、私としてはここは穏便に事を運びたいのです……。