残業しないで帰りなさい!

大事にします、なんて……。そんなこと言われるなんて、思いもしなかった。

私、この人のそばにいたい。

私なんかが身の程知らずかもしれないけど、私も課長を大事にするから、だから課長のそばにいたい。

神様、この人に出会わせてくれて本当にありがとう。

また涙が頬を伝って落ちた。

「君は、本当に泣き虫だなあ」

涙を拭いながら課長は笑った。

小さくうなずく。
本当はそんなことないけど、私はどういうわけか課長の前では泣き虫になってしまう。

課長は少し寂しげに微笑んだ。

「君はどうしても好きって言ってくんないね?言ってほしいんだけどなあ」

……課長、諦めていないのですか?
それはまだまだ私にはハードルが高いのです。

「じゃあさ、せめて俺のどこが好きなのかくらいは教えてよ」

「え?」

どこが好きって……。その質問もなんか困る。

「ちなみに俺は前に言った通りだからね」

のんびりしてるから気になってたってやつですか?

あ……。でも、私も同じだと思ったんだ。
王子様なのに、のんびりしてる課長の雰囲気に私も惹かれたんだ。

これなら言える?
がんばって言ってみる?
 
なんとなく胸の前で握って包帯を弄んでいた手をギュッと強く組んだ。

「あの……えっと、王子様なのに、のんびりしているところ……でしょうか」

私にしては、相当がんばって言ったと思う。
自分で自分を褒めてあげたい。

でも、私の答えを聞いて課長はちょっと複雑な表情をした。少し失笑してる?

「王子様?」

あ……。王子って言われたくないんだっけ?
王子って柄じゃないから?
観賞用みたいだから?

課長は一瞬、諦めたような悲しい瞳をしたからドキッとした。

そんなに王子って言われるのが嫌なの?
どうして?
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