残業しないで帰りなさい!

私にとって王子様って、ただ単にすごくカッコイイって意味なんだけどなあ。

それに私は、のんびりしている課長の雰囲気に惹かれたのに。

もちろん、カッコイイところも惹かれたけど……。課長を見て初めて、男の人をカッコイイなんて思ったわけだし。
でも、それは二の次で。

私はあなたのその雰囲気が好きなのです。
……そう言えばよかった?
うまく伝えられなくて、ごめんなさい。

不安になって見上げると、課長は一瞬見せた悲しい表情はもう見せず、いつものように優しく微笑んで、ちょっと意外なことを聞いてきた。

「君は王子様に何を望むの?どんな王子様がいい?」

「?」

あれ?
王子様ってことでいいのかな?

……そんなこと、なさそうだけど。
だって、いつもの優しい瞳だけど、糖度かなり低めだもん。
無理してそんなこと言ってるの?

何を望む?
どんな王子様?
……そんなの、思いつかないなあ。

うーん、と首を傾げてありのままを答えた。

「特に、ありませんけど……」

すると課長は、えっ?と目を大きく開いて驚いた顔をした。

ああ!しまった。
特にない、なんて身も蓋もなかったかな。
何か言えば良かった?
どうしよう、どうしよう。

「えっとえっと、望むって言うか、知りたいです」

焦って、思ったことが頭で整理される前に口から滑り落ちた。

「……知りたい?」

課長は首を傾げた。

焦ったとはいえ、言ってしまったからには、ちゃんと説明しないといけないのよね?

私は課長に望むことなんて思いつかないけど、課長のことが知りたい。

私はあなたに好奇心を持っているのです。

それをうまく説明できるかわからないけど、それでも勇気を出して、課長をじっと見つめた。
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