残業しないで帰りなさい!

私が黙ってうなずくと、課長はフッと笑った。

「今なんて思ったの?」

え?
もう、始まってるの?
うーん……じゃあ、がんばってみようかな?

「えっと……、課長に知りたいって言ってもらえて嬉しかったのと、あと、緊張しちゃうけどがんばって話そうって思いました」

「フフッ、よくできました!君の考えてることがわかって嬉しい」

にっこり笑う課長。
その笑顔、なんかなんか、爽やかすぎです。
思わず頬が染まる。

でも、想像以上にすんなり思ったことを言えた気がする。

そっか。
こうやって思ったことを話したら、私のことを知ってもらえるんだ。

考えてみたら、そうだよね。
そんなの友達なら当たり前だけど、課長の前では緊張しちゃって、言葉にしないで自分の頭の中だけで完結してたかもしれない。

もっと私のこと、課長に知ってほしい。これからはもっと思ったことを話してみよう。

うんうん、と心の中でうなずいていたら、課長が私を覗き込むように体を屈めて腰に手を添えたから、ドキッとした。

「……今度の休み、空いてる?」

「え?」

「空いてるなら、どっか一緒に出かけよ?」

私は課長を見上げて、こくこくとうなずいた。

それってそれって、デート、ですよね?
それはまた、とても緊張しそうです。

「何考えてんの?」

「ああっ、えっと、それってデートってこと、ですよね?」

「そうだよ」

「緊張しそうです」

フフッと課長は笑った。

「きっと俺も緊張するよ」

「ええっ?」

意外!課長が緊張するなんて。

「俺だって緊張するさ。もうだいぶ慣れたけど、さっきまで緊張したし」

「……全然気が付きませんでした」

「あはは、なら言わなきゃ良かったなあ」

のんきにそんなこと言って笑う課長は、余裕な雰囲気にも見える。
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