残業しないで帰りなさい!
腕を組んで壁に寄りかかっている課長。
大勢の人が行き交う騒音の中、課長の場所だけ時間が止まって音がないみたい。
今さら気が付くのもなんだけど。
やっぱり課長って、ものすごくカッコイイんだなあ……。
スーツ姿もカッコイイけど、私服だとまた全然雰囲気が違う。チノパンにジャケットを羽織った普通の格好なのにさりげなくお洒落で、スーツの時よりも若く見えて、それはもう王子様すぎて見蕩れてしまいます……。
それに、すごく人目を引いている。
本人は全然気にしていない様子だけど、けっこうな人数の女の子たちがこそこそ喋りながら振り返ってる。
課長が気にしていないのは、そんなの慣れっこだから?
……私、あんな人と一緒に歩くの?
考えただけでクラクラする。
そんな怖じ気づいて立ちすくむ私を見つけると、課長は爽やかな笑顔で手を振った。
その途端、振り返った女の子数名の視線が突き刺さる。……怖いです。
私、何も考えてなかった。
でも、考えてみたら当たり前だよね?
課長はものすごくカッコイイから女の子たちの注目の的で、そのカッコイイ人に手を振られる私は「え?彼女?」と敵視されるわけであります。
しかも、こんなに地味でろくに化粧もしない私を見て「どうしてあんなのが彼女なわけ?」となるわけであります。
その視線がビシビシと刺さるわけでアリマス。
王子様とお付き合いするって、なかなか大変そうです……。