残業しないで帰りなさい!
足がすくんで動けないでいる私の元に、課長が走り寄って来た。
ああ、その姿も爽やかです!
そして、なんだかますます刺さる視線が増えた気がする……。
固まる私に課長が首を傾げた。
「どうしたの?」
「い、いえっ」
「早かったね」
「か、課長の方こそ……」
「うん、まあ、早く君に会いたかったから」
また、そんなことを堂々と言うんですね?
そんなこと言われたら、私は赤くなってうつむくことしかできません。
課長が少し屈んで覗き込んだ。
「お腹すいてる?」
正直緊張しすぎて、全然お腹はすいていない。
困って見上げたら、課長は目を大きくした。
「まさか食べてきちゃった?」
「い、いえ!そうじゃなくて、……緊張しちゃって」
私が焦ってそう言うと、課長はあははっと笑った。
「なーんだ。じゃあ、歩いて話してるうちにきっとすいてくるよ」
そうかなあ……。
でも、そうかも。
課長と話すのはすごく楽しいから。きっと緊張していることすら忘れてしまう。
「今日連れて行きたい所ってね、レストランなんだ。セロリは使わないように言ってあるけど、他に嫌いなものなんてあったかな?」
「……いえ、他にはないです」