残業しないで帰りなさい!

さっきまで刺さるように感じていた視線も、嘘のように感じない。
課長と二人の世界に浸ってしまって。ドーム型のその世界に守られてるみたいで。
もう、周りの視線なんて全然気にならない。

「これから行く店はね、ピザをメインで出す店なんだ」

「ピザですか?」

「うん。ピザ、食べれる?」

「はい、大好きです」

「よかった」

ピザって宅配でしか食べたことないなあ。お店で食べるのは初めてかも。

そもそもピザを食べるなんて、久しぶり。
一人暮らしをする前に、みんなで宅配ピザを食べて以来かも。

そういえばさっき、嫌いな食べ物のことをお店に言ってあるなんて言ってたけど、それってもしかして、予約してあるってこと?
……そんな予約するようなお店、こんな格好でいいのかな?

「あの、今向かっているお店って、こんな服装で行っても平気なんでしょうか?」

課長はにっこり笑った。

「ぜーんぜん平気だよ。それに香奈ちゃん、すごく可愛いよ。その服似合ってるし」

すごく可愛い……。そんなことを言われるだけで頬が熱くなる。
私なんかより、課長の方がずっと素敵です。

香奈ちゃんって呼ばれるのもまだ慣れなくて、なんだかくすぐったい。

「でも、あの、……予約するようなお店なんですよね?」

「ん?うーん、まあ予約って言っても、知り合いだから言ってあるってところかな」

知り合いのお店?
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