残業しないで帰りなさい!
キョロキョロしながら席に座って、周りを見回した。
室内の壁も外壁と同じようにレンガ造りで、木枠の窓の外には緑の低木が茂っている。
木製のテーブルの上には本物のロウソクが灯ったランプと小さな花瓶。花瓶には淡いピンク色の生花が二輪飾られていて、すごく可愛い。
このお店、本当に雰囲気がいいなあ。落ち着いていて、すごく素敵。
課長はこういうお店が好きなんだ。
課長の好きなお店に連れてきてもらえるなんて、本当に嬉しい。
さっきの女性がパタパタとお水とおしぼりを運んできた。
「ごめんなさいね。今の時間忙しいから、あの人後で顔出すって」
「気にしなくていいですよ。ゆっくりさせてもらうんで、落ち着いてからでいいって伝えてください」
「今日はおまかせでいいのよね?」
「はい、お願いします」
「メニュー、いちおう置いておくね」
会話の感じだと、この女性の旦那様が課長のお知り合いってことかな?
課長が私の方を見た。
「今日はメニューから選ぶんじゃなくて、お勧めをおまかせで出してもらうことにしてるんだけど、いいかな?」
「はい」
つまり、ここのシェフが良いと思ったものを出してくれるってことですよね?そんな注文の仕方、したことないなあ。何が出てくるかわからないなんて、ちょっとワクワクする。
「もちろんメニューを見て食べたいのがあったら頼んでいいからね」
「えっと、はい」
でもきっと、お勧めの物を食べた上に何かなんて、そんなにたくさん食べられないと思う。