残業しないで帰りなさい!

お父さんが死んでしまった時、泣き崩れる優香さんの横で、私はベッドの上のお父さんを何度も触った。痛かったら起きるんじゃないかって、何度も爪の先で押したけど、でもお父さんは起きなかった。

ベッドに横たわるお父さんを茫然と見ながら、私は大泣きはしなかったけれど、もうお父さんの声が聞けないと思ったら、ポタポタと涙が落ちた。

あまりに急で、状況について行くのがやっとだったけれど、それでも、お父さんは死んでしまって、もういなくなってしまったんだということは理解した。

そして、ハタと気がついた。

私、どうなるんだろう……。

施設に預けられるのかな。

施設ってどんなところだろう。
どこにあるの?
怖い所じゃない?
苛められたりしない?
今までの学校には行けなくなっちゃう?

でも。
そうは言っても。

うまくやっていくしかないんだろうな。

だってもう、やるしかないから。
仕方ないものは、仕方ないから。

私は意外と早めに覚悟を決めた。

でも、通夜の前に車の中で優香さんが言った。

「香奈ちゃん、アンタの面倒は私が見るから、安心しな」

「……お父さんに頼まれたんですか?」

「それもあるけど、これも縁だから」

「縁?」

ご縁がある、の縁?そんなことだけで、優香さんが血の繋がりもない私の面倒を見るなんて、信じられなかった。
< 245 / 337 >

この作品をシェア

pagetop