残業しないで帰りなさい!
お父さんが死んでしまった時、泣き崩れる優香さんの横で、私はベッドの上のお父さんを何度も触った。痛かったら起きるんじゃないかって、何度も爪の先で押したけど、でもお父さんは起きなかった。
ベッドに横たわるお父さんを茫然と見ながら、私は大泣きはしなかったけれど、もうお父さんの声が聞けないと思ったら、ポタポタと涙が落ちた。
あまりに急で、状況について行くのがやっとだったけれど、それでも、お父さんは死んでしまって、もういなくなってしまったんだということは理解した。
そして、ハタと気がついた。
私、どうなるんだろう……。
施設に預けられるのかな。
施設ってどんなところだろう。
どこにあるの?
怖い所じゃない?
苛められたりしない?
今までの学校には行けなくなっちゃう?
でも。
そうは言っても。
うまくやっていくしかないんだろうな。
だってもう、やるしかないから。
仕方ないものは、仕方ないから。
私は意外と早めに覚悟を決めた。
でも、通夜の前に車の中で優香さんが言った。
「香奈ちゃん、アンタの面倒は私が見るから、安心しな」
「……お父さんに頼まれたんですか?」
「それもあるけど、これも縁だから」
「縁?」
ご縁がある、の縁?そんなことだけで、優香さんが血の繋がりもない私の面倒を見るなんて、信じられなかった。