残業しないで帰りなさい!

優香さんのあっけらかんとした明るさはサッパリしていて好きだけど、執着心の無さも感じて私はいつも心に不安を抱えていた。

もうさすがに優香さんは、私を引き取ろうとは思わないだろう。だって、血の繋がりもない私なんて、ただのお荷物だもの。

それなのに、優香さんは再婚相手の方を紹介する時、私に言った。

「香奈ちゃん、また変な心配してるみたいだけど、私、香奈ちゃんのことをきちんと考えてくれる人をゲットしてきたから、安心して」

優香さんがそんなこと言うとは思わなかったから、私はすごく驚いた。

「でも、せっかく再婚するのに……」

「私、香奈ちゃんのことを考えてくれないような男とは結婚なんてしないよ。それにこの人、無駄にお金持ってるから、高校も大学も好きなように私立とか行っていいからね」

優香さんは再婚相手の前で、堂々とそう言った。
そんなことを本人の前で言って平気なの?ってドキドキしていたら、再婚相手の方は気にする様子もなく、にこやかにうなずいた。

「本当だよ、遠慮しなくていいからね」

優香さんと再婚相手の方に、ニコニコしながらそう言われて、覚悟ができていたはずなのに、私はまたボロボロと大粒の涙が落として泣いた。
捨てられて当然だと思っていたのに、捨てられなかったから。

ただの縁、ただの情で繋がっているだけなのに、優香さんは私を捨てなかった。
捨てられなくて、私は嬉しかった。

優香さんは自分のことを、愛はないけど情はあるなんて言ったけれど、本当は愛も情も深い人なんだと思う。
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