残業しないで帰りなさい!

優香さんの再婚相手の和彦さんは、優香さんより13歳年上。見た目は私より背の小さいおじさんだけど、とても優しい人。

私は結局和彦さんのお言葉に甘えて、大学まで通わせてもらった。

三人の暮らしは穏やかで温かくて楽しくて、私たちは誰一人血は繋がっていなかったけれど、ちゃんと家族だったと思う。

そして、私が20歳になった時、二人はようやく子どもを授かって、心愛ちゃんが生まれた。
生まれたばかりの心愛ちゃんはすごく可愛くて、優香さんと一緒にお世話をして、それも本当に楽しかった。

でも、私は就職を機に家を出て一人暮らしを始めることにした。いい機会だったし、やっぱり優香さん、和彦さん、心愛ちゃんの三人が本当の家族だから。
そんなことを言ったら一人暮らしに反対されそうだから、言わなかったけど。

私が話をしているうちに、タコと野菜のマリネが運ばれてきた。
このマリネ、タコがびっくりするほど柔らかくて、酸味もまろやかですごく美味しい。
タコをフォークで刺しながら話を続けた。

「だから、優香さんには本当に感謝しているんです」

「……ふーん。それはわかったけどさ、やっぱり君を傷つけたのは許せないなあ」

「えっと、優香さんは思ったことをストレートに言いすぎるところがあるから、あの時あんなことを言ったのかもしれません」

「そう……」
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