残業しないで帰りなさい!
課長は落ち着いた微笑みを私に向けた。
「……でも、こうして香奈ちゃんの話を聞けて、香奈ちゃんのことを少しでも知ることができたから俺は嬉しいよ。話してくれてありがとう」
課長に私のこと、少しは知ってもらえた?それを嬉しいって言ってもらえたの?そんなことを言われたら、私もすごく嬉しい。
頬が熱くなって、はにかんでうつむいた。
「で?」
課長はにっこり笑うと首を傾げた。
「で!?」
……?
で?ってなんだろう。
「で、その優香さんは和彦さんのことをなんて呼んでんの?」
あっ……、そうでした。そういえば、名前の呼び方の話をしていたのでした。
その話に戻ると、ちょっと照れて口ごもってしまう。
「えっと……、二人はすごく年が離れているんですけど、『優香ちゃん』と『和彦くん』って呼び合ってるんです。いつもすごく仲が良くていいなって思ってて……」
「つまり?」
ここまで言ったら普通はもうわかりますよね?でも、あえて聞くところ、課長らしいです。
言うとなると緊張しちゃうなあ。
でも、がんばろう。
ギュッと目を閉じて、一度息を吸った。
「だから、あの、ええっと。……し、翔太くんって呼んでも、いいですか?」
勢い余って、少し声が裏返ってしまった……。