残業しないで帰りなさい!

驚いてじっと見上げる私にその人は微笑んだ。

「いらっしゃい」

「忙しそうだね」

「うん、まあね。でも、もう落ち着いたよ」

声も似てる!
驚いて翔太くんをの方を見た。

あれ?でも……。

翔太くんを見て、気が付いてしまった。

私の正面に座っている翔太くんは、いつも通りの輝く王子様。
でも、兄弟と思われるこの人は翔太くんに似ていてすごくカッコイイけれど、王子様には見えない。

そっか……。
私、すごくカッコイイ人のことを王子様だって思ってたけど、そうじゃなかったんだ。

他の人にとっての王子様が何であるかはわからないけど、私にとっての王子様は『好きな人』のことだったんだ。

だから、私の目には翔太くんが王子様に見えるんだ。

そう思ったらなんだか嬉しくなって、少し涙がにじんだ。

翔太くんは少し心配そうに微笑んだ。

「どうしたの?」

「い、いえっ」

「そう?あのね、香奈ちゃん、この人は……」

「生き別れの弟、アスマです。遊ぶ馬と書いて遊馬です。お会いできて光栄です。どうぞお見知りおきを」

トレイをテーブルに置いて、翔太くんの言葉を遮るようにそう言うと、遊馬さんは右手を胸に当てて仰々しく礼をした。
この人、仕草だけは王子様っぽいなあ。王子様じゃないけど。

「あ、あの。青山香奈と申します。よろしくお願いいたします」

私がペコリと頭を下げると遊馬さんは翔太くんにそっくりな顔で微笑んだ。
ホントに似てるなあ。

それにしても、生き別れって何だろう?
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