残業しないで帰りなさい!
「香奈ちゃん、本当に兄貴でいいの?」
「えっ?」
遊馬さんは人の悪そうな笑顔をした。
「この人見かけ倒しだよ?年だけはくってるけど、中身は子どもだよ?オムライス食べたーいとかトマト嫌ーいとか、ホントにガキ!だいたいね、アンタ卵食いすぎなんだよ」
「いいじゃない、別に」
見かけ倒し?中身は子ども?
確かに、時々はしゃいだりして子どもっぽさも感じてはいたけど。
でも、時々落ち着いた大人も感じる。
翔太くんはどちらも持っていると思う。
じっと考える私を見て、遊馬さんは鋭い目つきでクスッと笑った。
「まあ、ここに連れて来られちゃった時点で、もうアウトだけどね」
「アウト?」
「そ!だって、俺に紹介するってことはこの人本気ってことだからさ。もう、逃げられないと思うよ?」
「え……?」
「あれ?もしかして香奈ちゃん、聞いてないのかな?……ふーん、兄貴も人が悪いね」
「やだなあ、俺はいい人だよ」
あははっと笑う翔太くんを見て、遊馬さんはため息をついて私を見た。
「この人こんな感じだから心配してたんだけど、とりあえず安心したよ」
「え?」
「兄貴が彼女を連れて来たの、香奈ちゃんが初めてなんだ。だから、俺は嬉しい」
え……?そうなの?
驚いて目を見張った。
……嘘みたい。
翔太くんを見るとニコッと笑ったから、頬が熱くなった。
あの、私……。
すごくすごく、嬉しいです……。