残業しないで帰りなさい!

私があんまり嬉しそうにワインを見つめたから、翔太くんは少し心配そうな顔をした。

「このワイン意外と強いから、甘くて美味しいからって飲みすぎちゃダメだよ」

「私、お酒強いので大丈夫です」

「そんなに舐めてかかんない方がいいよ?」

酔わないもん、なんて思ったけれど、お酒強い、なんて言っている時点で既にほろ酔いだったのかもしれない。

2杯目のワインも、フルーツの香りが広がってやっぱり美味しい!
でも、少し頭がふわっとした気がした。確かに強めのお酒なのかもしれない。

翔太くんはロウソクの灯が映ったグラスをじっと見つめながら言った。

「大切な人ができたら会わせるって約束はね、遊馬と会ってすぐ、もう10年近く前にした約束なんだ。今まで遊馬の大切な人には何人か会ってきたけど、俺は一度も会わせたことがなかった」

「どうしてですか?」

「どうしてかなあ。きっと、この人だって思えなかったんだろうね。でも、香奈ちゃんのことはすぐにこの人だって思えたんだ。だから、一番最初に遊馬に会わせたかったんだと思う」

そんな風に言われるの、すごく嬉しい。嬉しくてゾワッとする。

「すごく……嬉しいです」

「そう?でも、遊馬が言っていた通り、俺は卑怯でズルいかもしれないよ?」

「?」

翔太くんはグラスを見ていた瞳をこちらに向けた。

甘くて真剣な瞳……。ワインよりずっと甘い。
そんな瞳で見つめられると、私はすぐに吸い込まれて、甘い甘い女の子にされてしまう。

「君のこと、絶対に手放したくないから。そのためなら俺はきっと何だってするよ」

キュンとして、目を大きく開いた。
絶対に手放したくないなんて。そのためなら何だってするなんて。キュンとし過ぎて胸が痺れた。酔ってるからそんな風に感じるの?
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