残業しないで帰りなさい!
わけがわからず私が首を傾げると、神経質そうな人はイライラをつのらせた様子で言った。
「残業してまでやる必要のある仕事なのかと聞いているんだ」
「あ、えっと、明日には必要なので今日終わらせないと……」
「じゃあなんで時間内にやらなかったんだ?」
「そ、それは……」
アルバイトさんがいきなり辞めちゃったからです、とは言えずに口ごもった。
「残業することは管理職の了承を得ているのか?」
「それは、えっと、はい。得ています」
鋭い目つきで睨んだままじっと黙る。
怖い。
……これって残業の見回り?
その人は短いため息をつくと、こめかみに人差し指を押し当て目を細めた。
「こんな単純作業で残業なんて、仕事のできない人間がすることだ。タイムスケジュールの管理すらできないってことだろう?それに『えっと』を連発するその中途半端な感じも、社会人としてどうなんだよ?」
ううっ……、いちいちキツイお言葉。
「えっと」は私の口癖のようなもので、自信がないとつい言ってしまう。
神経質そうなその人の強い口調が一つ一つ、グッサリグサグサと胸に刺さった。
「……すみません」
「さっさと帰れ」
「はい」
段ボールに入れる作業は途中だったけど、このくらいは明日の午前中でも大丈夫。だから、そのまま放置して帰ることにした。