残業しないで帰りなさい!

「すみませんでした。失礼します」

急いでバッグを手に取り電気を消して頭を下げつつ、神経質そうな人の横を通り過ぎた時、その人が首から下げたネームプレートを盗み見た。

『人事課 労務管理係長 大塚義彦』

この人、人事の係長なんだ……。見回りって交代でやってるのかな?
でも、同じ人事課なのに藤崎課長とは言い方も態度も全然違う。すごく威圧的。

私が通り過ぎると大塚係長は何も言わず、下のフロアへ向かうのか、さっさとエレベーターの方へ歩いて行った。

確かにこんな単純作業で残っていた私が悪かったのかもしれないけど。それにしても、あんなにキツイ言い方しなくてもいいんじゃないのかな……。

小走りで更衣室に入り、ロッカーの扉を開けたら、急に力が抜けてため息が出た。

「疲れた……」

ぽつりと独り言が漏れる。今日は嫌なことがたくさんあった。

ホント、散々だったな……。

金子さんには「教え方が悪い」って言われてしまったし、高野係長には「いい気になってたんじゃないの?」なんて言われて、大塚係長には「仕事ができない」なんて言い捨てられてしまった……。

ただでさえ争い事とか大声とか苦手なのに、ビクビクして緊張して落ち込んで。

疲れたっていうより、ダメージが大きかった。
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