残業しないで帰りなさい!

翔太くんは真剣な表情でうつむいた。

「大切にするなんて言葉と矛盾するかもしれないけど、君が俺から離れたいって言っても離してあげられないと思う」

それを聞いたら私は悲しくなった。

翔太くんは、私たちが離れることを、別れることを想像できるの?
私は別れるなんて全然想像できない。翔太くんから離れたいと思うなんて、考えられない。

「翔太くんはいつか私と別れる日が来るって思っているの?」

悲しくて、考えるより先に言葉が出てきてしまった。

「違うよ、別れたくないから離さないって言ったの」

だんだん涙声になってきた。

「私には別れることなんて想像もできない。全然わかんない。どうして私が離れたいなんて言うと思うの?私、離れたいなんて言わない」

辛くて悲しくて、あっという間に涙がたまってぽろっと落ちた。それを見て、翔太くんは急いで席を立って私の所に来ると屈んで頬の涙を拭った。

「ごめん……。ごめん、そうだよね。付き合ったばかりなのに変なこと言って、本当にごめん。大切にするなんて言ってる矢先に泣かせるなんて、俺はホントにダメだね」

「……」

黙って首を振った。
翔太くんは本心を言ってくれただけで、私がすぐに泣いたりするからいけないんです。
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