残業しないで帰りなさい!

遊馬さんはニイッと笑った。

「大丈夫だよ!兄貴はね、何があっても香奈ちゃんのそばにいる覚悟だと思う。香奈ちゃんが他の男を好きにならない限りね」

私は遊馬さんを見上げて首を振った。そんなことありえない。
翔太くん以外の人なんて考えられない。

「じゃあ、何があっても君らは乗り越えらえるよ。兄貴を信じてあげて」

そう言って遊馬さんは私の頭に手を置いた。
一瞬怖かったけど、手の感触が翔太くんと似ている。そういえば、遊馬さんも「一生分の」とか言うんだなあ。

「あーっ!ちょっと!触んないでくんない」

ちょうど戻って来た翔太くんが走り寄って、遊馬さんの手をベシッと叩き落とした。

「なんだよ、いいだろ?ちょっとくらい」

「ダメ」

翔太くんはスッと私に近付くといきなり後ろから抱き締めた。
遊馬さんが目の前にいるのにそんなことをするなんて、巻き付く腕の感触に驚いてビシッと固まる。

「香奈ちゃんも簡単に他の男に触らせてはいけません」

耳のすぐそばから聞こえてくる声にビクッとする。他の男だなんて、全然意識してなかった。なんか似てるし。

「は、はい……」

前々からなんとなく気が付いてたけど、翔太くんってもしかして、すごいヤキモチ妬き?

ぎゅうっと私を抱き締める翔太くんを見て、遊馬さんはまた呆れた顔をした。

「何してんだよっ」

「触られた分、取り返してんの」

「ガキだな!」

「何とでも言って」

翔太くん、耳元で話し続けるの、やめてください。すごくドキドキします……。
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