残業しないで帰りなさい!
遊馬さんは頭をかいた。
「悪かったよ、俺はただ君らを応援しただけだから」
遊馬さんの言葉に私もうんうんとうなずいた。
「じゃあ、触んないで応援して」
「わーったよ!香奈ちゃん、こんなヤキモチ妬きなガキでホントにいいの?」
また、うんうんとうなずく。
ドキドキしすぎて今はこの動きしかできない。
「良かった!」
「ひゃあっ」
翔太くんが強く抱き締めて私の頭に頬ずりしたから、驚いて思わず声を出してしまった。
「何の騒ぎ?」
さっきの女性が困ったような笑顔で入って来た。
「兄貴がバカなだけ」
「……確かにそんな感じねえ」
遊馬さんが女性のそばに行くと、翔太くんはやっと私から腕を離してくれた。すごくドキドキしてしまって、いつもは離れてしまうと寂しいのに、今は解放されてちょっとほっとする。
遊馬さんがそんな私を見て苦笑いをした。
「香奈ちゃん、この人、俺の奥さんだよ」
うんうん、そうだと思ってた。
遊馬さんの奥様、さっき遊馬さんより年上みたいなことを言っていたけど、そんな風には見えないなあ。
「妻の菜々美です。さっきはあまり話もできなくてごめんなさいね」
「いえ、そんな。あの、青山香奈と申します。よろしくお願いいたします」
私がぺこりと頭を下げると菜々美さんはにっこりと笑った。
「翔太さんの彼女が可愛らしい人で良かった。内心すっごく心配してたのよ。ねえ?」
「そうそう、いろんな意味でね」
「とってもお似合い。本当に良かった」
お似合いだなんて、そんな風に言ってもらえるだけで嬉しいです。
私は翔太くんみたいな王子様の隣にいるだけで自信がなくてドキドキなのですから。