残業しないで帰りなさい!

「敬語を喋ったら罰ゲーム」

「え?」

「っていうのはどうだろう」

手を繋いだ途端、翔太くんが変なことを言い出した。
急にどうしたの?

「さっき、少しずつでいいって言ってませんでしたっけ……」

「だって、そうしたらいつまでたっても敬語のままになりそうなんだもん」

言われてみたら確かにそうかもしれない。でも、罰ゲームなんて。

「罰はね、考え中」

「そんなあ」

「大丈夫、変な罰にはしないから」

うーん、そうはいっても急に敬語をやめることは難しいのです。

「じゃあ、始めっ」

「ええー?」

困ったなあ。絶対敬語喋っちゃうよ……。

「実はね、これから行きたい所があるんだ」

「……どこ?」

敬語を喋らないようにするのって、すごく緊張しちゃって話し方がぎこちなくなる……。

「香奈ちゃん、船乗れる?船酔いしない?」

「ふね?」

「うん。俺、一度シーバス乗ってみたかったんだよねえ」

ああ、シーバス!それなら、船酔いするほど揺れないし、全然平気。
シーバスなんて、中学生の頃、友達とみんなで乗って以来。久しぶりだなあ。

「いいですよ」

「ハイッ!罰ゲーム」

「あっ!」

もう敬語喋っちゃった……。

「やっぱりムリ……」

「大丈夫!がんばって」

「うー……」

だいたい、罰ゲームの罰って何にするつもりなのかな?
私は変なプレッシャーに苦しんでるのに、翔太くんは全然気にする様子もなく、私の手を引いてとっても楽しそう。
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