残業しないで帰りなさい!
はあ……。
「教え方が悪いんです!」
「いい気になってたんじゃないの?」
「仕事ができない奴のすることだ!」
あーあ、どうして思い出したくもないのに、何度も繰り返し思い出しちゃうんだろう。
しかも金子さんは辞めちゃったし……。
私が、悪かったの?
じゃあ、どうしたらよかったんだろう。
私、何もできずにおろおろすることしかできなかった。
結局なんにもできなかった。
私が力不足だから。
私が無能だから。
だから、……やっぱり私が悪いんだ。
急に辛くなってきて、ぽろっと涙が落ちた。
仕事で泣くなんて初めて。なんかバカみたい。
そんなバカみたいな自分のこともなんか悲しくなって、もっと涙が出てきた。
ぐすぐすと鼻水をすすりながら着替えて、手の甲で涙を拭ってから更衣室の外に出た。もちろん、大塚係長は藤崎課長みたいに待ってなんかいない。
大塚係長がいたら、それはそれでまたストレスになりそうだけど。
静かな暗い廊下で一人エレベーターを待つ。
あれ?
これってちょっと、怖いかも……。
自動販売機の低く唸るような音がやたら響いて聞こえる。
背後の非常階段の暗闇が無性に気になって、小さな物音にビクッとして。
藤崎課長が立っていた今は誰もいない壁をふと見つめた。
今になって、あの時気が付かなかった藤崎課長の心遣いを感じた。
あの時は全然怖くなかった。
でもそれは、藤崎課長がさりげなくそばにいてくれたからだったんだ。