残業しないで帰りなさい!
船に乗り込むと、思っていたより風が強くて寒い。やっぱり海の上だからかな?
それに日もだいぶ落ちてきて、夕暮れの空になってきたから冷え込んできたのかもしれない。
翔太くんは船に乗ったら、すぐにまた手を繋いでくれた。
少し引っ張られる感じにドキッとして、嬉しくて、それから安心する。
ずっと手を繋いでいるからって、私の手を包む手のひらが当たり前になっていくのかというと実際はそうでもなくて、そのぶ厚い感触や大きさを意識するとやっぱりすごくドキドキして、息が上手にできなくなる。
それは私が恋愛初心者だからでしょうか?
「外は風が強いから、中に入ろうか?」
「うん」
シーバスには外で景色を眺める席と、室内から眺める席がある。温かい時なら外のデッキに出てもいいのかもしれないけど、今は寒いから室内がいい。
翔太くん、外で見たい!なんて言わなくて良かった……。
船内に入って席に座る時も手を繋いだまま、引き寄せられるように座った。腕がくっつく距離の近さにドキドキする。
それに、やっぱり翔太くんを見る女の子の視線の多さを感じる。カップルで来ている女の子ですらチラチラ見たりしてる。
本人は全く気にしてないみたいだけど……。
本当に気にならないのかな?
船内をキョロキョロ見回して、若干はしゃぎ始めた翔太くんをじっと見つめる。
この人、時々こうやって子どもみたいにはしゃぐんだよなあ。
そういう所にもたまらなく惹きつけられてしまうけど。