残業しないで帰りなさい!

外はだんだん夕暮れから夕闇になって、街の光も急に輝き始めた。

街の光も、夕闇の空も、わずかに輝きだした星も、本当にすごく綺麗……。

水の音と共に船がガコンッと動き出した。

横浜の景色なんて見慣れていると思っていたけど、そんなことないかも。外を流れていくのは見慣れない素敵な夜景。

そんな夜景を、嬉しそうに目を輝かせて見る翔太くんの横顔を見つめた。

少年のような横顔。

外の景色もキラキラしていてすごく綺麗だけど、はしゃいでいる翔太くんを見ているだけで、私はお腹いっぱいです。

「ねえねえ、意外と水面が近くない?」

「うん」

「こっち側から観覧車とかあのでかいビル見たの、初めてだなあ」

「うん」

「見て見て、赤レンガだって!」

「うん」

翔太くんは外を見ていた視線を私に向けた。

「……香奈ちゃん。もしかして、はしゃいでんの、俺だけ?」

「ううん、私もはしゃいでる」

「そうは見えないけどなあ」

「ホントだよ?」

私が見上げて微笑むと、翔太くんも微笑んだ。

二人で微笑むと、その途端柔らかい空気に包まれて、たまらなく幸せな気持ちになる。

あなたの存在は強烈です。
どんなに綺麗な夜景より、どんなに綺麗な夜空よりも、私はあなたに釘付けです。

夜景を見るふりをして、窓に映るあなたのことだけ見ている。

私はあなたに夢中です。
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