残業しないで帰りなさい!

一度触っちゃったんだし、もうこうなったら遠慮なく触ってみようかな。

じっと髪を見てそーっと触った。触れた髪の毛は間違いなく本物。
ちょっとほっとしたりして。

思っていたよりも硬いなあ。もっと柔らかいと思ってたけど。でも、本当にサラサラしてる。
サラサラしててしなやかですごく手触りがいい。キューティクルがちゃんとしてて、一本一本がしっかりしてる感じ。

「すごい真剣だね?」

翔太くんに困った顔で言われてハッとした。
観察モードですごい真剣に観察しちゃった。
……だって。

「男の人の髪に触るのなんて、初めてだから」

「……ヤバイね。そのセリフ」

「?」

何がヤバイの?
首を傾げる。

「俺も香奈ちゃんの髪に触りたい」

「え?」

触ったことあるよね?
それでも触りたいの?

「ダメ?」

何とも言えなくて、小さく首を振った。

ダメじゃない。
ドキドキするだけで。

翔太くんも私の頭に手を伸ばした。
耳のすぐ上の髪を少し束で取って触れているのを感じる。
触れられている感覚がくすぐったい。

「綺麗な髪」

そんなこと囁かれるとドキドキする。

「いい香り、いい手触り」

そんなこと……。
香りなんてシャンプーの香りだし、手触りだって、今まで染めたりしたことがないから、健康な髪なだけだよ?今まで髪のことなんて全然気にしてなかったもん。

きっと翔太くんの髪の方が手触りいいと思う。

それに、今ふと気が付いたけど、私たち、何やってるんだろう。

お互いの髪に触ったりして。

ここ、普通に外だよね?
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