残業しないで帰りなさい!

息をするのも忘れてた。息苦しさに気がついて大きく息を吸う。

「君の4回と俺の1回を足して5回ね」

足すの?よくわからない。何言ってるの?この状況は何?

あっ!
ここ、外!

人がいる!歩いてる!

ここ、外!

「困ってる?」

またうなずく。

「怖い?」

怖い?怖いかと問われれば怖くはない。

けど、困ってる。
私は困っているのです。

だから首を振った。

「香奈ちゃん、キスしてもいいですか?あっ、敬語喋っちゃった。足して6回ね」

ニヤッてなに?
なに言ってるの?
なに勝手に足してるの?

「香奈ちゃん、キスしてもいい?」

ブンブン首を振る。

「……そ、そと!ここ、外」

「いいじゃない」

「人、いる。歩いてる」

「平気だよ、誰も見てない」

そ、そうかな?
もしかして翔太くん、悪趣味モード?
こんな時に悪趣味モード全開なんですか?

「ダメ?」

あっ、またそんな寂しそうな瞳をして。それ、わざとですよね?

「……」

ああもう!その寂しそうな瞳、耐えがたいんだよなあ。
それ、やめてくれませんか?

「ダメ?」

もう一度寂しい瞳のまま聞いてくる翔太くん。わざとだってわかってるんだけど……。

思わずうつむく私の耳元で囁く。

「ダメ、だよね……」

ああもう!その寂しげな声もやめてほしい。

「……ダメ、というわけでは」

「外だから?緊張するから?」

うんうんとうなずいた。そのどっちもです。

なんかもう、わけがわかりません。
頭の中がごちゃごちゃです。
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