残業しないで帰りなさい!

不思議な感触……。
いつも手が離れていく時みたいに感触が蒸発していかない。
重なった体温は消えてしまうけど、感触はいつまでも唇に残っているような気がする。

これは消えないでほしいっていう私の願望?

ふと、道の向こう側がざわついたような気がして、ハッとした。
そういえば、ここ、外!

もしかして、見られちゃった!?

見られるかもしれないのに外でキスをするなんて……。
翔太くん、やっぱり悪趣味モードだよね?

目を合わせられずに顔をそむけると、翔太くんは困ったように微笑んだ。

「怒ってる?」

「怒ってはいませんけど」

「じゃあ、どうしたの?」

「困惑、しているのです」

「ふーん……。敬語使ったね?2回追加」

「!」

なにそれ!翔太くん、全然余裕?
なんでそんなに余裕なの?

うろたえる私の頬に触れて、翔太くんは首を傾げた。

「君のこと、うちに連れて帰ってもいい?」

「えっ!?あ、あの……」

そんな話、ありましたね。
私、完全に忘れてた。

そんな甘い瞳で言わないでほしい。
吸い込まれてとても困惑する……。

翔太くん、私を連れて帰りたいの?
どうしたらいいのか、さっぱりわからない。

「残りは家に帰ってからにしよ」

「残り?」

「あと6回だったっけ?もう回数、わかんなくなっちゃったなあ」

「……」

私を家に連れて帰ってキスをするのですか?
堂々とそんなことを言われると頬が熱くなってしまう。

でも、誰かに見られちゃいそうなこんな環境でするよりはマシ?

正直、またあの感触を感じたい、なんて思ってしまう自分もいて……。

「大丈夫、キス以上はしませんから。あっ、敬語喋っちゃった。もう1回追加しなきゃ」

なんですか、そのてへぺろ的な表情。

「……わざと?」

「うん、わざと!」

にっこり笑って楽しそうです。

困ったなあ。
どうしよう……。
< 284 / 337 >

この作品をシェア

pagetop