残業しないで帰りなさい!
不思議な感触……。
いつも手が離れていく時みたいに感触が蒸発していかない。
重なった体温は消えてしまうけど、感触はいつまでも唇に残っているような気がする。
これは消えないでほしいっていう私の願望?
ふと、道の向こう側がざわついたような気がして、ハッとした。
そういえば、ここ、外!
もしかして、見られちゃった!?
見られるかもしれないのに外でキスをするなんて……。
翔太くん、やっぱり悪趣味モードだよね?
目を合わせられずに顔をそむけると、翔太くんは困ったように微笑んだ。
「怒ってる?」
「怒ってはいませんけど」
「じゃあ、どうしたの?」
「困惑、しているのです」
「ふーん……。敬語使ったね?2回追加」
「!」
なにそれ!翔太くん、全然余裕?
なんでそんなに余裕なの?
うろたえる私の頬に触れて、翔太くんは首を傾げた。
「君のこと、うちに連れて帰ってもいい?」
「えっ!?あ、あの……」
そんな話、ありましたね。
私、完全に忘れてた。
そんな甘い瞳で言わないでほしい。
吸い込まれてとても困惑する……。
翔太くん、私を連れて帰りたいの?
どうしたらいいのか、さっぱりわからない。
「残りは家に帰ってからにしよ」
「残り?」
「あと6回だったっけ?もう回数、わかんなくなっちゃったなあ」
「……」
私を家に連れて帰ってキスをするのですか?
堂々とそんなことを言われると頬が熱くなってしまう。
でも、誰かに見られちゃいそうなこんな環境でするよりはマシ?
正直、またあの感触を感じたい、なんて思ってしまう自分もいて……。
「大丈夫、キス以上はしませんから。あっ、敬語喋っちゃった。もう1回追加しなきゃ」
なんですか、そのてへぺろ的な表情。
「……わざと?」
「うん、わざと!」
にっこり笑って楽しそうです。
困ったなあ。
どうしよう……。