残業しないで帰りなさい!
「家に行く前にコンビニ寄ってもいい?」
「……うん」
手を繋いですぐ目の前のコンビニに入る。
「ちなみに香奈ちゃん、今日はおうちに帰すつもりはないからね?」
「ん?」
何、言ってるの?
「お泊まりセット買ってあげようか?」
……?
「えっ?……エエーッ!?」
「香奈ちゃん、声、大きいよ」
そっか、家に連れて帰るってそういうことか。そうだったのか。……そうだよね?
なんの考えもなしについて来てしまった。
これは困った……。
まさか泊まることになるなんて。
翔太くんは優しい瞳を私に向けた。
「それとも今日は帰る?無理に泊まらなくてもいいよ」
この瞳は本当に心配してる時の瞳だな。私がでかい声なんか出して驚いたから、翔太くん心配しちゃったよね?
「ううん、ちょっと驚いただけ」
翔太くんがキス以上はしないと言ったんだからきっとしないと思う。
いや、しても構わないのです。
だって、恋人なんだもんね?
私たちは恋人なのです。
恋人なら、そーゆーこともあるのです。
私が何も考えてなかったのがいけないのです。いまだに何も考えてないけど。
結局コンビニで、お泊まりセットなるものと歯ブラシ、そして下着まで買ってもらってしまった。確かに着替えも何も持って来てないけど。
……お泊まりセットに下着。
なんかもうその響きだけで、思考回路が停止します。とんでもない新境地です。
マンションに入ってポストを見る翔太くん。
「うちは3階なんだ。308」
「うん」
「ここから香奈ちゃんの家までは、電車で30分くらいかな」
「そう」
エレベーターの前で、翔太くんが私を覗き込んだ。
「香奈ちゃん、大丈夫?」
「うん」
とりあえず、うなずく。