残業しないで帰りなさい!
「ごめんね……。いきなり男の家なんて、怖くないわけがないよね?」
「えっと、怖いっていうか、ちょっとわけがわからないだけ」
翔太くんは私の前に立つと真剣な表情をした。
「無理やり連れてきちゃったことは悪いと思ってる。けど、まだ君のことは抱かないよ。今はたくさん話をして一緒に過ごして、香奈ちゃんのことを知りたいだけ」
翔太くんがあんまりハッキリ言ったから、驚いて固まってしまった。
「よく知らない男になんて、抱かれたくないでしょ?」
どうなんでしょう?
考えたこともなかった。
「……よく、わからない」
翔太くんは目を細めた。
「わかんない?香奈ちゃん、こんな風に考えなしに他の男について行っちゃダメだよ?」
どうしてそうなる!
「そんなことしないようっ!」
翔太くんは私の即答が嬉しかったらしい。
ニコッと笑った。
「フフッ、よろしい」
翔太くんはよく知らない男なの?
知っていることもたくさんあるし、知らないこともたくさんある。
それを言ったら、翔太くんだって私のことをよく知らない。
要するにもっとお互いのことを知ってからにしましょうってことなのかな?
何て言うか、翔太くんは今まで瑞穂から聞いてきた男の人とはかけ離れている。
翔太くんが大人だから?そういう性格だから?それとも、私がお子ちゃまだから気を遣ってくれてる?
3階でエレベーターが止まると、先に私を降ろしてくれた翔太くんの背中について歩く。
「どーぞ」
「……おじゃまします」
玄関の扉を開けてもらって、ちょっとひんやりした部屋の中に足を踏み入れた。