残業しないで帰りなさい!

「この肉まん、思いのほかでかいなあ」

「うん!ボリュームがすごいねっ」

「ねっ」

肉まんを口いっぱいにほおばって、またふふっと笑った。

「具が本格的っていうかさ、肉とかちゃんとしてるよ」

「うんうん」

「こんなちゃんとした肉っぽい物、家で食べんの久しぶりだなあ」

「……え?」

あの……、翔太くん?
肉まんはちゃんとしたご飯じゃないと思う。

「翔太くん、普段、何食べてるの?」

ちゃんと食べてないのかな?

「普段?そうねえ、朝は基本カップ麺で、昼は外食でしょ。夜はやる気があれば作るけど、簡単なのしか作んないよ。野菜炒めとかそういうヤツ。最近はそれすら作ってないけど」

うーん、朝からカップ麺かあ……。

そういえば。

「オムライスは作らないの?」

翔太くんは、あははっと笑った。

「休みの日に何度かチャレンジしたんだけどね、一度もうまく作れなかったなあ。最終的にはチャーハンになっちゃうんだ」

うまく作れないって前にも言ってたね?
きっと、卵に火を通しすぎちゃってるんだろうな。

「卵がボロボロになっちゃう?」

「そうそう。あっ、そうだ!香奈ちゃん、オムライス作れるんだっけ?」

「うーん、作れなくはないけど」

あんまり作ったことはないなあ。

翔太くんは目をキラキラさせて身を乗り出した。

「じゃあさ、明日一緒にオムライス作ろ!」

すごく楽しそうに翔太くんはそう言ったけど、その発言に私はドキッとしてしまった。

だって翔太くん、明日の話をしてる。

そーゆーことはしないって言われてるけど、私は今、男の人と一晩を共に過ごそうとしているのです。
この家に泊まって明日の朝を迎えた時、私はもう今の私とは違ったりするの?

やっぱり停止する思考回路。
それはもう、ドキドキなわけであります。
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