残業しないで帰りなさい!
「まっすぐでありたいとか言う以前に、俺はバカになってるから、まっすぐに進みすぎて暴走しちゃってるけどね」
「暴走?」
暴走なんてしてたかな?
首を傾げると、翔太くんは失笑した。
「今日だって、こんな風に君を無理やり連れて帰ってきちゃった。もっと距離をおくべきなのに、連れて帰りたいと思ったら止めらんなくてこの始末ですよ」
うーん。そうだったの?
まあ、確かに翔太くんにしてはちょっと強引だなって思ってたけど。
「こんな年になって素直な気持ちで恋をするなんて、俺、ホント無茶してんなあって思うよ。これでうまくいかなかったら致命傷だよ?鎧を捨てた生身を刀でバッサリ切られるみたいなもんだよ?でも、それはわかってるけど、あえて立ち向かってる。君と素直な気持ちで恋ができるなら、傷付いても構わない。君が一緒にいてくれるなら、無様でも構わない。君を失うくらいなら、もう俺は死んでも構わないって思うんだ」
「そんな……」
いつもより少し低い声が胸に響く。
死んでも構わないなんて、そんなのダメ。
「こんな風に君にプレッシャーをかけてフラれないようにするなんて、俺は卑怯者だね」
「……たとえ卑怯でも、私、翔太くんのことが好きだよ?だから死んでも構わないなんて、言わないで」
だって、お父さんみたいに死んじゃったら、もうあなたの声を聞けない。はしゃぐあなたの姿を見られない。この体温も、胸の厚さも、私を包む腕も感じられない。
卑怯でいいからそばにいて。
私はあなたが大好き。
死んじゃイヤ。
生きていてほしい。
あっという間に大粒の涙がぽろぽろと流れ落ちた。