残業しないで帰りなさい!

その後、シャワーを浴びておいで、なんてドキドキする台詞を言われて、離れるのが寂しいと思いつつ、ぎこちない足取りで言われるままにお風呂を使わせてもらうことになった。

はあっ……、どうしよう。
私、男の人の家で服を脱いで、見慣れないお風呂でシャワーなんか浴びてる……。そんな日が来るなんて、考えてもいなかった。

あっ!瑞穂先生!大変です!
変な下着は着て行くなって言われたから、何の気なしに上下はとりあえず揃えてきたのに、買ってもらった下着を履くと上下が揃わなくなっちゃうよ!?
お風呂から出た後に揃ってないと意味がないのでは?
それとも別に揃ってなくてもいい?

……でも、そーゆーことはしないってことだから、まあいいのかな?

貸してもらった大きめの服を着て、おずおずとリビングに戻ると、捕獲された動物みたいにハシッと抱き締められた。

えっと、どうしたのかな?

「お風呂上がりの香奈ちゃん、可愛い」

そ、そうですか?
ちょっとおろおろしちゃいます。

「待ってて。俺も入ってくるね」

うん。待ってる。
なんかなんか、ドキドキします。

私はあなたがお風呂から出てくるのを待っている。こんなドキドキすることが他にあるでしょうか。

ドキドキ。ドキドキ。ドキドキ。

……心臓が破裂しそう。
もうダメ……。

よし!足をバタバタさせてみよう!

バタバタバタバタバタバタ。

そんなことをしていたら翔太くんが戻ってきた。

「……香奈ちゃん。そういうところも大好きだよ」

えっと、それは足をバタバタさせていたところでしょうか?
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