残業しないで帰りなさい!
布団の生地に触れたらますますドキドキしてきたけれど、でも……大丈夫。
何が大丈夫?
もう何が何だかよくわからない。
おずおずとベッドに入った。
パチッと電気が消えて真っ暗になって、翔太くんが布団に入ってくるのを感じる。
やっぱりドキドキするよう。
「香奈ちゃん」
「ん?」
「抱き締めて眠りたい」
「……え?……えっ!」
一緒に寝るだけじゃなかったの?
私、ただ横に寝るだけでもドキドキして大変なのに。頭が爆発しそうです……。
おろおろしていたら、布の擦れる音と共に腕が脇腹を滑って、驚いてビクッとした。
まだ私、良いともダメとも答えてないよ?
でも、ぎこちなく抱き寄せられて腕の中に閉じ込められたら、とても温かくて、ドキドキするのに心が穏やかになっていくのを感じた。
私ってホントに簡単です。
「怖い?」
「ううん、怖くない」
「手、痛くない?」
「うん、……大丈夫」
「そう」
その後、しばらくお互いの呼吸を聞くだけで、何も話さなかった。
聞こえてくる鼓動に耳を傾けていたらだんだん力が抜けてきてウトウトし始めた時、翔太くんが大きく息を吸った音が聞こえた。
あんなに緊張していたくせに、ウトウト眠りそうになってた自分にちょっと驚く……。
「……香奈ちゃん、あんな風に倒れたのはあの1回だけなの?」
ん?
急にどうしたのかな?
「うん。あの1回だけ」
「そっか……。もう二度とあんな思いをさせたくないんだ。でも、君を守りたくても、どうしたらいいのかよくわかんないからさ。どこからが怖くてどこまでが平気なのか、知りたいんだよ」
私を守りたい、なんて。
嬉しくて涙がにじむ。
翔太くんはあの時のことを真剣に考えてくれてるんだ。